風をあつめて

蛭澤家のセカンドライフ日記です。

『誰かが足りない』 宮下奈都

本_20260619

*****内容*****

6つの短編小説の連作。

主人公は

コンビニで働く青年、

認知症の始まったおばあさん、

係長になったばかりのOL、

引きこもりの青年、

オムレツ専門のコックの青年、

不思議な能力のある若い女性。

 

それぞれが「誰かが足りない」ことがテーマになっている。

そして、6つとも最後に10月31日午後6時に

ハライというレストランを予約することで話を終えている。

10月31日に6組の客が顔を合わせて何かが起こった

とかいったことは描かれていない。

 

*****感想*****

宮下奈都らしい美しい小説。

人間の心をかき混ぜると汚い灰色になりそうなのに、

静かに汚物を沈殿させて、

透き通った上澄み液だけを掬い取って

「ほら」って差し出しているような世界です。

若い頃の僕なら

「人間の一面しか描いていない」

と否定したかもしれないが、

老齢の今、この世界がとても心地いい。

人間の汚物のことは若い人たちにまかせて、

心を清らかにして

天国へと旅立ちたいと

願っているのです。