
90歳になった阿刀田高のエッセイ集です。
僕は読書好きなほうですが、
阿刀田高の作品とは今まで縁がありませんでした。
品行方正で真面目そうな氏のイメージが敬遠の理由かもしれません。
本書を読んでみて、やっぱり真面目な人でした。
そして立派です。
90歳で家族や福祉のお世話にならないで
自分で食事を作り買い物にも行っている。
(掃除洗濯はヘルパーさんにお願いしているそうです。)
新米の高齢者の僕が勉強になることが多々ありました。
特に終わりの方の2つのエピソードが印象に残ったので
ここにメモしておきます。
*****まず一つ*****
阿刀田さんは最近になって月の美しさに気付いたんだとか。
夜中にトイレに行く途中、灯り取りの窓にまあるい月がかかっていて
「美しい」
と感じたとあります。
ちょっと抜粋します。
☆--------
「月は偉いな」
と思った。黒い夜にたった一人で歩んでいる。冴え冴えと美しいのに、その美しさをことさらに誇るわけでもなく静かに己を映し出している。たった独りは、
「月の矜持なんだ」
略
「老齢は月のように生きたいな」
一人であることにめげず、いつもそれなりに美しく凛々しい。
「美しくは無理だなあ」
☆-------
僕はずっと高齢者になったら一人はいけないんだと思っていました。
自分を見守ってくれている人々を常に周りに
配置しておかないといけないんだと
思っていました。
でも、別に独りでええやん。
美しく凛々しく独りで生き抜くという
新しい視点を得ることができました。
これは収穫でした。
(見守りがいらないと言ってるわけじゃないですよ~~~。)
*****もうひとつ*****
阿刀田さんが本書を書き終えた後、
出版の直前に施設に入所していた奥さんが亡くなったそうで、
あとがきのあとがきが最後に添えられています。
阿刀田さんによると奥さんは死の間際に阿刀田さんに
「ありがとう」
と、そう言った。
そう確信しいていると。
そして、自分も最後の最後には
何があっても
「ありがとう」
と残された人たちに言おうと決めている。
何が何でもそうしよう、と。
まったく同感でした。